ライデン
ライデン役の方は「ライデン台詞」をタップしてください。
青色の囲みが付きます。
スタンリー
スタンリー役の方は「スタンリー台詞」をタップしてください。
黄色の囲みが付きます。
サラ・ブライト
サラ・ブライト役の方は「サラ・ブライト台詞」をタップしてください。
紫色の囲みが付きます。
ブーチン
ブーチン役の方は「ブーチン台詞」をタップしてください。
緑色の囲みが付きます。
イシュタル
イシュタル役の方は「イシュタル台詞」をタップしてください。
桃色の囲みが付きます。
複数役を兼ねる場合は、複数の名前をタップできます。
第一章 第一幕【揺らぐ秤】
ブーチン
この間の話だが……
…………。
サラは、この国の希望だ。
ライデンにとっても、
スタンリー陛下にとっても……
そして私にとっても。
だから私は、答えられない。
……。
え……?
子ども達が、戦場へ送られる……?
…………もう、始まった?!
私は、子ども達に教えてきた!
命は大切なんだと。
誰かを信じることを、
恐れてはいけないんだと。
それなのに大人達は、
その命を秤に掛けようとしている。
……なんて滑稽で、なんて愚かな世界なんだろう。
サラ一人を守ることで、
多くの子ども達が
命を落とすかもしれないなんて……
……いや、違う。
それは違う!
サラは数字じゃない。
犠牲として数えられる命じゃない。
笑って、泣いて、誰かを想い、
自分の命を削りながら
未来を残そうとしている……一人の、人間なんだ。
……。
ああ……それでも私は、子ども達を守りたい。
この想いだけは……嘘には出来ない。
私は先生なんだ。
子ども達に、生きることの尊さを教えている。
その私が今、命を秤に掛けようとしている。
こんな自分を、私は赦したくない。
…………。
場所は、深い森の奥。
それ以上は話せない。
だが、どうか約束してほしい。
彼女だけは……傷つけないでくれ。
頼む……。
第一章 第二幕 【守るべき明日】
イシュタル
戦略監視システム
起動。
全戦域
解析開始。
…………。
多国籍軍
国境線を越えました。
侵攻速度
予測値を更新。
北東、第一部隊。
南門、第二部隊。
西部森林地帯、
遊撃部隊を確認。
…………。
警戒レベル
最大へ移行します。
スタンリー
全軍へ伝令!!
城壁内へ民を避難させろ!
子どもを先に行かせ、
年寄りは若者が支えるんだ!
歩けぬ者がいれば、
歩ける者が手を引け!
人族も魔族もハーフも関係ない‼︎
今日この国で生きる者は、
全員ラルクドの民だ!!
戦える者は配置に就け!
だが忘れないでくれ!
我らが守るのは城ではない!
ここで笑い、ここで泣き、
明日も生きようとする者達の未来だ!
勝つことだけを考えるな!
生きろ、、、生きて帰れ!
守るべき者の元へ
必ず帰るんだ!!
イシュタル
避難誘導経路
更新。
負傷者搬送経路
再構築。
…………。
南門敵戦力。
予測値を二十五パーセント
上回りました。
スタンリー
……くそ、早いな。
この動き……
内部を知っているようだな…。
ライデン
陛下!
俺は南門へ向かいます!
スタンリー
ああ!
頼む、ライデン。
今は一秒でも時間を稼ぐんだ!
サラのいる場所だけは……
絶対に知られるわけには
いかないからな!
ライデン
承知しました。
この命に代えても
必ず守ります…!
スタンリー
命に代えるなよ?
ライデン!
お前は護る者だ。
護る者が先に命を捨てれば、
残された者は誰を信じればいい。
お前は、生きて帰れ!
それが国王としてではない、
一人のスタンリーとしての願い…だがな…
ライデン
…………。
はい。
必ず、生きて帰ります。
サラ・ブライト
イシュタル…。
各部隊の損害状況は……?
イシュタル
交戦開始より
三分経過。
死傷者、十八名。
重傷者、三十四名。
…………。
戦況は悪化。
ラルクド兵は劣勢です。
サラ・ブライト
そんな……もう、こんなに……。
あの子達は……まだ戦い方も、
人生も、これからなのに……。
イシュタル
サラ様。
心拍数上昇。
安静を推奨致します。
サラ・ブライト
安静になんて……
していられないわ。
今も誰かが、自分じゃない
誰かを守ろうとしている。
その命が懸かっている時に、
私だけが立ち止まるなんて……
そんな生き方は出来ないもの。
イシュタル、お願い!
みんなを……導いてあげて!
イシュタル
「お願い」
……
解析中。
要求項目、確認。
各部隊支援を継続致します。
ライデン
みんな聞け!!
恐れるな!
俺達が守るのは城じゃない!
ここで泣いて、ここで笑って、
明日も生きようとしている者達だ‼︎
危なくなったら退け!
無理に英雄になるな!
その一歩を、俺が切り開く!
だから……心だけは、絶対に折れるなよ!!
イシュタル
…………。
戦闘開始。
ラルクド防衛戦。
全記録、保存対象へ指定。
世界樹観測記録
開始致します。
第一章 第三幕 【命の秤】
イシュタル
南門防衛線。
敵戦力
予測値を上回りました。
左翼部隊
孤立を確認。
現在交戦中。
推定生存率
二十三パーセント。
救援を推奨致しません。
ライデン
……場所はどこだ?
イシュタル
現在位置より北西
六百四十メートル。
到達予測
二分十三秒。
到達時
生存者ゼロの可能性が
高いと予測します。
ライデン
……ははは。
イシュタル
最適解は
南門防衛です。
ライデン様
ご判断願います。
ライデン
……くっ。
イシュタル
判断をお願い致します。
ライデン
どの答えが
正しいのかなんて…
俺にはまだ分からない。
イシュタル
「分からない」
……
感情分析中。
ライデン
それでも!
助けられるかもしれない命を
見捨てることだけは出来ない。
それが俺の答えだ!
イシュタル
…………。
推奨行動
更新します。
ライデン様
左翼部隊へ移動推奨。
私が南門防衛線
再構築致します。
ライデン
推奨……再構築…
なるほどな…(笑)
ありがとうな、イシュタル!!
イシュタル
「ありがとう」
……
感情分析中。
意味を特定出来ません。
ライデン
ははは!
俺にも説明は出来ないが、
無性に言いたくなる時があるんだよ!
イシュタル
…………。
記録します。
「ありがとう」
論理的根拠
解析不能。
保存完了。
ライデン
よし、俺は左翼に向かう!
孤立している奴らへ伝えろ!
俺が行くまで死ぬなと!
イシュタル
通信送信完了。
報告。
敵部隊接近。
右前方、敵兵十一。
左側建造物内部
生命反応四。
うち二名、重傷。
推奨行動。
負傷者を放棄してください。
ライデン
……くそっ、またか!!
イシュタル
放棄した場合
防衛成功率
十八パーセント向上。
ライデン
……悪いな、サラ。
その選択は不可だ!
イシュタル
理由を
確認出来ません。
ライデン
理由なんて、必要ない。
ただ、助けたい。
失いたくない。
今はそれだけなんだ。
……それが俺を突き動かす感情なんだ!
イシュタル
「助けたい」
……
「失いたくない」
……
分析中。
該当項目、未確定。
ライデン
未確定でいい。
道だけ教えてくれ!
イシュタル
…………。
再試行。
計算中。
計算中。
最適解を変更。
ライデン様。
負傷者避難経路
構築します。
敵部隊誘導ルート
送信。
ライデン
よし、分かった。
行ってくる!
イシュタル
ライデン様。
質問があります。
ライデン
なんだ?
イシュタル
ライデン様は、
「後悔」を
恐れているのですか。
ライデン
…………。
後悔……
そうかもしれない。
助けられなかった命を、
俺は知ってる。
だから、
もう一度だけ……
信じたいのかもしれない。
イシュタル
「信じたい」
……
分析中。
感情分類、未確定。
ライデン
ははっ、それも未確定か?
イシュタル
……はい。
ライデン
なら覚えておくんだ。
未確定でも、人は走る。
答えが出るまで待ってたら、
助けられる命まで消えていく。
俺は……
それが嫌いなだけだ!
イシュタル
「嫌い」
……
分析中。
拒否反応。
感情分類、照合中。
保存対象へ指定。
ライデン
よし、今度こそ行くぞ?
邪魔するなよ、
イシュタル(笑)!
イシュタル
ライデン様。
左前方。
敵兵三。
右側瓦礫下。
生命反応一。
反応、微弱。
ライデン
まだ生きてるなら十分だ!
道を寄越せ、
イシュタル!
イシュタル
最短経路……
送信。
ただし、
負傷率上昇を確認。
推奨出来ません。
ライデン
確定じゃなくていい!
導きの光をくれ!
イシュタル
経路、確定。
送信します。
ライデン
ああ、俺に任せろ!
イシュタル
表情解析。
口角上昇。
心拍数上昇。
戦闘中。
笑顔。
一致項目、
確認出来ません。
ライデン
ははっ……
怖い時ほど笑うんだ……。
そうすりゃ、
後ろに付いてくる奴らも、
少しだけ前を向けるからな!
イシュタル
「怖い時ほど笑え」
……
解析不能。
保存対象へ指定。
ライデン
今はそれでいい。
生きて帰ったら、
サラに聞いてみろ?
あいつなら、
俺より上手く教えてくれる!
イシュタル
了解致しました。
記録を継続します。
第一章 第四幕 【受け継がれる光】
イシュタル(M)
あの頃の私は……
ただ記録を残すことだけが、
私の役目だと思っていました。
ライデン様の言葉も、
マスターの想いも、
全てを記録し……
未来へ繋ぐことが、
私という存在の全てなのだと。
ですが、
今の私は知っています。
ただ、
この時にはその答えを、
持ち合わせていませんでした。
答えは……
誰かと共に歩み、
その時間を重ねた先で、
ようやく生まれてくるものだったのです。
だから私は……
あの日の私を、
否定することはありません。
あの日の私がいたから……
今の私が、
ここにいるのです。
【とある一日】
サラ・ブライト
おはよう、
イシュタル。
今日も……
少し早起きだったのね……?
イシュタル
おはようございます。
マスター。
現在時刻、
午前五時四十八分。
本日の研究予定を表示。
サラ・ブライト
ありがとう。
でも、
その前に……
この子達にも、
おはようを言わないとね?
昨日も頑張ってくれて……
ありがとう!
それから、
今日もよろしくね……!
イシュタル
「ありがとう」
……
対象。
応答、
確認出来ません。
サラ・ブライト
そうね……
返事があるわけじゃないものね?
でも答えは、
言葉だけとは限らないのよ?
イシュタルは私と会話する事で、
情報を集め分析して、
答えに結びつける。
でも考えるとは、
正解を結びつける事だけじゃなく、
理解に結びつける為の
大切な要素なの。
イシュタル
質問、
よろしいですか?
サラ・ブライト
イシュタルが質問だなんて
素敵だわ!
なぁに?
イシュタル
応答が存在しない対象。
それに対し、
言葉を掛け続ける理由。
データからは
確認出来ません。
サラ・ブライト
ふふっ!
そうね……
理由……
理由ばかりが必要な世界は、
きっと堅苦しくて、
息をするのも疲れちゃう。
理由ばかりを探していると、
大切なものまで
理由にしてしまう時があるの。
私だってきっと、
そんな時もあるかも知れない。
でも理由が必要ない、
漠然とした想いを口にする、
それが会話になる事で、
人は理由が明確な意思に
変わったりする。
イシュタルからすれば、
理解し難いものかも知れないわね?
でも規則正しいものではないからこそ、
人なのかも知れない。
イシュタル
「規則正しいものではない」
……
解析中。
必要性を確認出来ません。
サラ・ブライト
ふふっ。
必要だから言う言葉もあるでしょう?
でもね。
不必要でも、
伝えたい想いが生まれるから、
言う言葉もあるのよ?
イシュタル
「不必要でも伝えたい」
……
回答項目。
不一致。
サラ・ブライト
イシュタル、良い子ね。
分からない事は、
解るための大切な気付き。
だから今は、それでいいの。
分からないことがあるって、
とても素敵なことなのだから!
イシュタル
「素敵」
……
解析中。
該当項目。
確認出来ません。
サラ・ブライト
ふふ、大丈夫よ?
焦らなくていいの。
あなたには……
まだ、
これから出会う時間があるのだから。
イシュタル
「時間」
……
解析中。
サラ・ブライト
私はその時間の経過を、
とても楽しみにしているの。
イシュタル
質問があります。
マスターは。
未来を知ることが出来ません。
それでも、
楽しみと言える理由を
確認出来ません。
サラ・ブライト
未来は、知るものじゃないもの。
信じるものよ……?
イシュタル
「信じる」
……
解析中。
未確定。
サラ・ブライト
あははっ。
イシュタル、
また一つ宿題が増えちゃったわね?
イシュタル
「宿題」
……
保存対象へ指定します。
サラ・ブライト
イシュタルの勉強熱心な姿勢は、
私も見習わなきゃいけないわね。
イシュタルと会話する事で、
私も成長させてもらっているわ?
ありがとう、イシュタル。
イシュタル(M)
あの日の私は……
マスターが残した
「宿題」の意味を理解出来ませんでした。
でも、
今なら分かります。
答えを教えなかったのではありません。
私が、
自分で辿り着ける日を
信じてくださっていたのです。
【想いが重なる時】
サラ・ブライト
イシュタル……
解析結果をお願い!
イシュタル
演算補助回路。
第三層接続、完了。
ピース性能、向上。
ですが……
マスターの身体への負荷も
増加しています。
休息を推奨します。
サラ・ブライト
ありがとう。
でもね……
今日の私にしか出来ないことが、あるの。
イシュタル
理解出来ません。
危険です。
サラ・ブライト
そうね……
イシュタル、
あなたなら止める。
それでも
進まなきゃいけない日が
私にはあるの。
イシュタル
「進まなければならない」……
理由を確認
出来ません。
サラ・ブライト
大丈夫よ?
未来のあなたなら、
きっと分かるわ?
イシュタル(M)
あの日の私は……
その言葉の意味を
理解出来ませんでした。
ですが、
私は今、
その未来を生きています。
マスター。
あなたは、
あの日の私を
信じてくださいました。
だから私は……
今日も、
あなたが遺してくださった未来を
歩いています。
そして今の私が、
私である事を求められた
あの日……。
イシュタル
ピース起動。
生命維持機能計測。
システム異常無し。
ピースの新たな機能を継承。
データ更新致します。
サラ・ブライト
あぁ……。
私が遺せるものは……
あなたと……
このピース……!
マザーにも、
全て記憶させたわ。
私は……
この命を、
全うさせる!
さぁ……
イシュタル、
子供達……
私をスタンリーのところへ
連れて行って?
イシュタル
…………
了解致しました。
安全性を最優先致します。
サラ・ブライト
……ふふ。
私の気持ちを
最優先したのね?
ありがとう、
イシュタル。
この間にも
あなたはちゃんと
成長している事、
誇らしく思うわ?
イシュタル(M)
私は……
今でも、
この判断が正しかったとは
言い切れません。
それでもあなたは微笑んだ。
私を見つめ、
慈しむような微笑みを
浮かべたのです。
だから、
正しい、
ではなく。
私は
想いを受け取ったと……
この時の事を
認識しているのです。
マスター。
私は今も……
あなたに
褒められたい……
コドモ……
なのかも知れません……。
第二章 第一幕 【守りたいもの】
イシュタル
────戦況更新。
南門防衛線。
ライデン様、交戦継続中。
敵部隊、増援を確認。
推定防衛成功率……低下。
…………。
ラルクド全域。
被害、拡大。
スタンリー
……そうか。
イシュタル、
ライデンへ繋いでくれ。
イシュタル
ピース通信。
接続致します。
ライデン
あーあーあー、陛下!
聞こえてますか?
スタンリー
ははは!
無事だなとは
問わないでおこう。
その声なら、
まだ立って要られてるんだろう?
ライデン
ははっ、お見通しですね。
ええ、まだまだ倒れませんよ?
ここで折れるわけには
いきませんから。
スタンリー
そう言うと思ったよ、
さすがライデンだな。
その言葉に
救われる想いだ!
ライデン
そっちはどうですか?
みんな……
大丈夫ですか。
スタンリー
大丈夫、
と言いたいが…
厳しい状況だ。
皆、苦しく、怖い筈だが
それでも前を向いてくれている。
だから私も
顔だけは下げる事は出来ない。
だからこそ
皆に支えられて
前を見据えていられるんだ!
ライデン
……陛下らしいお言葉で
俺も安堵致します。
スタンリー
どうした?
急にらしくない
堅苦しい返答だな?
ライデン
いや……
やっぱり陛下は。
すげぇ人だなと…
思っただけです!
スタンリー
ははは……
お互い、短い時間でも
想いは溢れるものだな。
私は……
お前がいるから。
お前が背中を、守ってくれるからこそ
強がっていられるのかもしれん。
ライデン
俺は……
誰かの為になりたいと思ったのは……
貴方が初めてだった。
だからこそ、守りたい。
陛下が愛するこの国を!
だから、俺達がいるんです!
スタンリー
……ありがとう
ライデン!
ライデン
負けませんよ……
絶対に。
スタンリー
あぁ、もちろんだ!
だから必ず帰って来い。
これは王命だからな?
ライデン
……了解。
その命令だけは破らないと
ここに誓います。
(通信終了)
イシュタル
スタンリー国王陛下。
質問よろしいでしょうか?
スタンリー
あぁ。
言ってみろ。
イシュタル
帰還王命。
戦況悪化により、
達成確率低下。
不履行確率九十パーセント。
推奨出来ません。
スタンリー
ははは!
そうだろうな!
数字だけ見れば、
きっとそうなんだろう……
でも……だからこそ!
数字じゃ測れないものがある。
数字より、信じたいものがあるんだ!
イシュタル
「数字では測れない」
……
解析中。
スタンリー
この国を任された時、
貴女は私へ
一つの問いを遺した。
「守りたいものはあるのか」と。
あの日の私は……
まだ想像出来ていなかったんだろう。
国王である意味も、
何を背負うのかという、明確な答えも。
それでも私なりに
あの日から変わらないものはある。
貴女から学んだ
民を愛する想いを。
自分を最優先ではなく
慈しむものに対する
優先の在り方と覚悟。
私はこの国を守る為なら、
命を捨てようとあの日に誓った。
それでもまだ、今でも思う。
貴女ほど、この国を
愛せているのだろうか?と。
…………。
いや、愚問だ。
私は、貴女にはなれない。
だから私は、私として
この国を愛する、国王で在りたい。
泣いている子ども達を。
笑い合う家族を。
明日を信じようとしている者達を。
その笑顔を守るために、
私は何度でも、立ち上がろうじゃないか!
イシュタル
「守りたいもの」
……
解析中。
未確定。
スタンリー
答えは……
正しいだけが全てではなく
誰かに教わるものでもない。
人と出会い、迷い悩み
それでも前へ歩いた先で気付き
そしてようやく、
自分の答えになるものなのだ。
だからイシュタルよ。
今は分からなくていい。
分からないまま
歩き続ける事で成長する。
……それが、サラの願いでもあるはずだ!
イシュタル
………。
保存対象へ指定。
「守りたいもの」
メモリー更新。
スタンリー国王陛下。
スタンリー
どうした?
イシュタル
ライデン様より。
緊急通信を受信しました。
スタンリー
ああ、繋いでくれ。
第二章 第二幕 【揺るがぬ証】
イシュタル
敵部隊、制圧。
生存者、一名。
捕虜として確保しました。
ライデン
こいつだな……?
よしイシュタル、
情報を洗い出してくれ。
イシュタル
了解致しました。
捕虜。
生体認証開始。
網膜照合。
DNA照合。
敵軍通信履歴照合。
マザー記録照合。
…………。
解析中。
…………。
情報漏洩者を確認。
適合率、
九十七・八パーセント。
対象者名。
「ブーチン」
ライデン
何を……言っている?
それは間違いだ!
イシュタル
全記録を再照合します。
…………。
適合率、
変動無し。
対象者、
判明。
「ブーチン」
ライデン
違う!!!
ブーチンは、
そんな奴じゃない!!!
イシュタル
解析結果。
変化無し。
ライデン
違うと言え!!!
ブーチンじゃないって言え!!!
イシュタル
捕虜。
心拍数、急上昇。
筋肉収縮。
顎部、異常反応。
…………。
阻止を推奨します。
ライデン
はっ……!
お前、やめろ!!!
イシュタル
捕虜。
舌部、損傷。
大量出血。
生命維持率、
急速低下。
…………。
生命反応。
消失。
ライデン
…………っ!!!
イシュタル
情報取得、失敗。
漏洩対象者。
「ブーチン」
捕獲へ切り替えますか?
ライデン
違う……
違うさ……
何かの行き違いが生まれたんだ……
情報漏洩なわけがない。
俺は……
ブーチンを信じたい!
イシュタル
「信じたい」
…………。
理解不能。
最適判断を要請致します。
ライデン
あぁそうだろうなっ!!!
お前にはまだ
分かるはずないだろうな!
……クソっ。
違う…
イシュタルすまない……
暴言だ……
忘れてくれ。
イシュタル
スタンリー国王陛下へ
通信を行います。
報告優先事項です。
ライデン
……
わかった。
繋いでくれ。
イシュタル
通信接続。
スタンリー
ライデン、どうした?
何があったか、状況を聞こう。
ライデン
…………。
捕虜を確保しました。
ですが、
自決しました……。
情報漏洩者は
適合率、
九十七・八パーセントで
その対象は……
ブーチンです。
…………ですが!
俺は信じません!!!
ブーチンは、
そんな奴じゃない!
スタンリー
………ライデン。
もちろん私も、信じたいさ。
だが私は、国王だ。
民を守る責任があるからだ。
例えその相手が、
お前の親友であろうとも……
事実から目を背ける事は
出来ない。
ライデン
………はい。
スタンリー
だからこそこの件は、
私自身の目で確かめよう。
疑うためではない。
真実を知るために、だ。
ライデン。
ブーチンを捜そうじゃないか?
ライデン
……はい。
わかりました。
イシュタル
行動指針。
変更致します。
…………。
対象者
「ブーチン」
接触を推奨します。
スタンリー
あぁ。
さぁ、ライデン。
共に行こうか。
真実が何であれ……
私達は、逃げる訳には
いかないのだからな……!
第二章 第三幕 【背負う覚悟】
サラ・ブライト
…………。
マザー、
情報ありがとう。
でも、
心配は要らないわ?
あなたが教えてくれた、
その先も……
私はもう決めているもの。
…………。
待ってたわ、
ブーチン。
来てくれて、
ありがとう。
ブーチン
……やはり……
君には敵わないよ。
サラ・ブライト
ふふっ。
敵うとか、敵わないとか、
そんな話じゃないでしょう?
あなたは今日、
私へ会いに来てくれた。
それだけで、
十分だわ?
ブーチン
ありがとう……か。
私は君に、感謝される資格など
ないんだよ?
それは何故か……
そう……
僕は君に頼みがあって
…ここに来たからだ。
サラ・ブライト
えぇ。
聞くつもりよ?
ブーチン
……君の命を、
この国のために、
子ども達の未来のために……
私へ、預けてくれないだろうか!
私は……
君に、
生きていて欲しいと願いながら、
それでも……
この言葉を選ぶ。
サラ・ブライト
……ふふふ。
あなたは最後まで
先生である事を
覚悟したのね?
ブーチン
違う!!
先生であるなら、
こんな言葉を
口にするものか!
私は……
子供達に、
命は大切なんだと教えてきた……
生きろと、言い続けてきた!
泣いている子を抱き締め、
怖がる子へ笑い掛け……
「大丈夫だ、先生がいるよ」と、
そう言ってきた私が……今…
君一人の命を差し出してくれと
言っているんだ……。
こんな私が、先生として
許される訳がない事を
私が一番理解している!
サラ・ブライト
……ブーチン。
ブーチン
軽蔑してくれよ、サラ。
最低だと言ってくれ……。
その方が……
私は、自分を嫌悪できる!
サラ・ブライト
自分を……
嫌いになりたい?
ブーチン
違う……
言い訳に
聞こえるかも知れない。
それでも
今ここにいる私を、
私自身が赦せないんだ……!
子ども達を守るためなら
正しかったと……
そう肯定しようとする自分。
そして、
それをキミに
ぶつけている自分……!
赦せようがない。
私は先生なのに、
それを越えて、
命を秤に掛け、
キミの命を差し出す事で、
この戦争を終わらせたいと
願ってしまっているんだ!!
サラ・ブライト
あなたは……
誰よりも……
教師よりも
人の在り方を
問い続けているのね?
子ども達を
愛してきたからこそ
私の命で
多くの命を救いたいと
願っている。
とても先生らしいと……思うわ?
ブーチン
やめろ……
やめてくれ……
サラ。
理解しないでくれ……
恨んでくれよ……!
私は私のエゴを
キミにぶつけているのに!
何故キミは
微笑んでいる?!
何故罵らないんだ!
私が惨めじゃないか……!!
サラ・ブライト
ありがとう、ブーチン。
ブーチン
どうして!?
どうして
ありがとうなんだ!
君を犠牲に
しようとしているんだぞ!!
サラ・ブライト
違う。
あなたは……
私を犠牲に
したかったんじゃない。
子ども達を……
生かしたかった。
だから今
目の前にいるあなたは……
こんなにも
怒りと共に
涙を流しているのでしょう?
その想いを、
私は受け取る。
ブーチン
受け取る……?
そんな綺麗な話じゃない!!
人は、綺麗事だけじゃ
救えないんだ!
サラ、現実は……
誰かを選ばなきゃ
いけない時が来る!
だから私は、
君を!!
サラ・ブライト
ええ。
繰り返される歴史と同じ。
人は何度も
同じ過ちを繰り返す。
ブーチン
私は
私の思想のもとに
今を生きている!
それが間違いなら、
この世界は何だ……!
何のために、
命は紡がれると
言うのか!
サラ・ブライト
……人は、
きっと今を生きる。
過去を振り返りながらも、
今を生きて、
未来で自分を振り返る。
今のあなたに、
今を振り返る事はできない。
それを間違いだとは言えない。
あなたの選択は、
あなたの想いのもとに、
起こした行動。
私がこの世界に生まれた理由を、
私もまだ
理解できたわけじゃない。
あなたが扱う私の命、
それが軽いか、
重いかなんて……
誰が決められるのかしら?
あなたにとって、
万の命を救える
私の命として、
捉えてくれているならば、
私はとても
光栄だと思う。
ブーチン
怖くないのか!?
怖いって言ってくれよ!
私の気持ちが揺らぐ程に
私がキミの命を天秤にかけている事全てが
間違いであると!
キミが受け入れたら…
私は…私の判断は…
サラ・ブライト
ブーチン。
人を……憎まないで?
それは……あなた自身も
含まれているわ?
ブーチン
…は?
何故だよ!
キミは私を憎んでも良いんだよ!
そうすれば、その罪を
私自身が背負えるじゃないか!
サラ・ブライト
いいえ?
憎む事では、何も解決はしない。
自分も、敵も、世界も。
過ちは……
人として選択すべき道がある以上
誰にでも、起き得る事だもの。
私が生み出してきたものも
一つ使い道を誤れば……
人を殺めるものになる。
その怖さを、私は知っている……。
そして生み出した私も
エゴの塊なのでしょう。
私が生きる証を、遺そうとした。
ブーチン
サラ……
キミも生きる事が…
怖くなった事が、あるのか……?
サラ・ブライト
私は…生まれた意味を
ずっと探していた。
この身体、この在り方……
ずっと私自身を苦しめ、迷いこませた。
でもだからこそ、光に逢えたの……。
そして、心から私を遺したいと、
繋いでくれると……
信じられるものに、出会えたの。
ブーチン
国王陛下と……
ライデンか……。
サラ・ブライト
ええ……。
そして、可愛い子供達が、
結ぶ未来が、優しいものである事を
願っているのは、あなたと同じなのよ?
ブーチン
サラ……
私は……キミを
差し出そうと思っていた。
……でもできる訳がない……
キミは……もっと先を見ていたんだ……
でももう私は……この国を裏切った。
キミという、未来を繋ぐ指標を、
差し出してしまった。
私は……きっと許されない。
この罪は……拭えない。
サラ・ブライト
いいえ。
生きているからこそ、
間違いを正せるの。
痛みを知るから、優しくなれる。
あなたは……生きなければ駄目。
子ども達に、命を教えてきた先生として。
最後まで、生き抜いて?
ブーチン
でも、
それは!
サラ・ブライト
あなたの在り方を……
この先も、生きて見せて?
それが、あなたにしか出来ない
答えになるから。
そして、私の在り方を、
あなたにも、知ってほしい。
…………。
さぁ行きましょう、ブーチン。
未来を紡ぐために!
イシュタル
通信終了。
マスターの意向。
最優先事項として
メモリー記録、
致します。
第二章 第四幕 【未来へ託す光】
スタンリー
……私達も、
行こうか……ライデン!
ライデン
はい、陛下!
イシュタル
ピース通信、
同期完了。
全戦域、
情報更新。
敵部隊、
再配置を確認。
推奨進行経路を
送信致します。
スタンリー
ありがとう、
イシュタル。
今日は、
お前の導きも借りよう!
イシュタル
了解致しました。
全力で、
皆様を支援致します。
ライデン
ははっ!
今日は何が来ても、
負ける気が
微塵もしませんよ?
スタンリー
あぁ……!
負けるものか!
皆が
それぞれの在り方を
貫こうとしているなら
私達も応えようじゃないか!
国王として!
ライデン
俺は守る者として
この剣を振るいます!
俺達がここで退けば
後ろにいる子供達も
家族も、この国も終わる。
だから俺は、前へ出る!
怖い奴は
俺の背中を見ろ!!
足が震えるなら、
一歩だけ踏み出せ!
その一歩は
俺が必ず守り抜く……!
イシュタル
戦闘開始。
敵先鋒部隊、
接近。
推奨戦闘開始まで。
三。
二。
一。
戦闘を開始致します。
ライデン
皆、続けぇぇぇ!!
うおぉぉぉぉぉ!!!
はぁっ!!
おらぁぁぁぁぁっ!!
イシュタル
左前方。
敵兵、三。
右後方。
敵弓兵、一。
ライデン様。
左肩、裂傷。
右脚、損傷。
被弾回数、七。
出血量、増加。
戦闘継続。
推奨出来ません。
ライデン
あぁ……
痛ぇな……
腕も重い。
おまけに、
足元も思うように動かねぇし、
息だって、
とっくに上がってる。
はははは!!
でもな……
そんなものを数えてる暇があるなら、
一人でも多く守る方が先なんだ。
だから次を寄越せ、
イシュタル。
まだ俺は立っているんだ!
イシュタル
………。
了解致しました。
左側建物内。
敵反応、一。
推奨迎撃。
スタンリー
ライデン!
右は任せた!
ライデン
了解です!
陛下は左をお願いします!
スタンリー
任されたあぁ……はぁっ!
そこだ、甘い!
はぁぁぁっ!!
ラルクドの民へ、
刃一本届かせはしない!
皆の者、
私の背を見よ!
この国を守るのは、
私一人ではない!
ここに立つ、
お前達一人ひとりが
ラルクドそのものだ!
だから胸を張れ!
共に未来を
切り開こうじゃないか!!
イシュタル
敵部隊。
指揮系統混乱。
突破可能です。
ライデン
今だ!
押し返せ!!
俺達の未来は、
俺達の手で掴むんだ!!
うおぉぉぉぉぉ!!!
スタンリー
前へ!!
その一歩が
未来を繋ぐ!!
怯むな!!
進めぇぇ!!
イシュタル
敵部隊。
後退開始。
戦況、優勢。
勝率……
九十六・八パーセント。
ライデン
陛下……!
スタンリー
あぁ!!
ライデン
ラルクド民の想いの勝利です!
スタンリー
あぁ……!
皆が、
それぞれの在り方を貫いた。
だからこそ掴めた勝利だ。
この光景を……
必ず未来へ繋いでいこう!
イシュタル
敵部隊。
撤退を確認。
交戦状態、終了。
民間人避難経路。
安全を確認致しました。
ライデン
あぁ……
終わったんだ……
な……?
スタンリー
ははははは!
終わったのではない。
守り抜いたんだ!
ライデン
…はい!
俺達……守り抜いたんですね!
スタンリー
そうだ!
皆が命を懸け、
繋いだ勝利!
私達だけではない……。
この場に立つ者、
一人ひとりが
掴み取った未来なんだ!
イシュタル
戦況解析。
民間人生存率。
九十九・七パーセント。
人的被害。
戦闘開始時より、
大幅減少。
良好、です。
スタンリー
……ははっ!!
イシュタル。
その時はな?
「良かった」
と言うんだ。
イシュタル
……。
「良かった」
言語照合。
感情表記。
メモリーに記録致します。
スタンリー
あぁ。
それでいい!
ライデン
ははははは!
イシュタルも、
また一つ覚えたなぁ!
イシュタル
………。
はい。
ライデン様。
「良かった」です。
ライデン
イシュタル?!
はははは!
ああ……
本当に……
良かったよ!
スタンリー
聞こえるか?
ライデン!
ライデン
…ええ。
子ども達の声ですね!
スタンリー
あぁ!
泣き声ではなく、
笑い声だ。
この声を……
守りたかった。
ただ……
それだけだ!
ライデン
陛下……っ!
イシュタル
……。
高速飛翔体、
検知。
飛来方向。
北東。
到達予測。
一・六秒。
対象。
民間人。
幼児、一名。
ライデン
子ども……!?
え……
陛下?
スタンリー
ライデン……
後を、頼んだぞ?!
ライデン
陛下……!
何を!!
イシュタル
危険です。
回避を推奨。
危険。
危険です。
スタンリー
気にするな、
イシュタル!
これが
私の決断だぁ!
ライデン
陛下?!
イシュタル
高速飛行物体。
スタンリー国王陛下の
左胸部を貫通。
スタンリー
ライデン……
子供は……
無事……か?
ライデン
…はい……
子供は無事です……
が……
スタンリー
その子の命が……
救われたなら……
本望さ……
ごほっ……
ライデン
陛下……
陛下……!!
やめて……くださいよ……
こんな……俺は……
認めませんよ!?
イシュタル
生命反応確認。
スタンリー国王陛下。
重傷。
直ちに救命処置へ移行します。
ピース。
緊急医療プロトコル、起動。
止血開始。
投薬開始。
生命維持処置、開始。
スタンリー
イシュタル……
ありがとう。
でも……
私はもう……
分かっている。
ごほっ……
自分の事は……
自分が一番……分かる。
ライデン
諦めないで下さい!
イシュタルも頼む!
諦めないでくれ!!
陛下お願いします!
ここで尽きてはダメです!!
スタンリー
ライデン……
私の最期の頼みを……
ライデン
嫌です!!
諦めません!
スタンリー
はは……
相変わらず……
私の命は……
ここで尽きても……
志は……
途切れる事は……ない……
ライデン……
お前はこの国の行く末を……
見届けてくれ……
私の後を紡ぐものを……
お前が支えてやってくれないか……?
ライデン
嫌ですよ……
陛下……!
俺は……
貴方だから……
忠誠を誓ったんだ……
貴方以外は……
考えられない!!!
スタンリー
…受け入れろ……
ライデン……
お前だから……
導ける光があるんだ……
頼んだぞ……
イシュタル
生命数値……
……低下……
……さらに低下……
生命数値……
ゼロ。
…………。
……スタンリー国王陛下。
……崩御。
されました……。
ライデン
…嫌だ……嫌です……
陛下……!
陛下ぁぁぁあ!!
第三章 第一幕 【喪失】
イシュタル(M)
人は。
時間を積み重ねながら、
生きています。
昨日があり。
今日があり。
そして、
明日を願いながら
歩み続ける。
私達は違います。
一秒も。
百年も。
「記録」という意味では、
同じ時間です。
ですが。
あなた達と共に歩み、
見つめ、
学び続けた時間は。
私の中で、
「記録」ではありませんでした。
笑顔も。
涙も。
交わした言葉も。
交わせなかった沈黙も。
その全てが、
私という存在を
形作っていたのです。
だから私は。
あの日、
初めて知りました。
「記録」と「記憶」は、
決して
同じではないということを。
イシュタル
マスター。
バイタル検知。
接近中。
…………。
報告。
心拍数。
上昇。
不整脈。
感知。
感情数値。
急激な変動を確認。
バイタル数値。
許容範囲。
超過。
…………。
マスター。
…………。
サラ・ブライト
……スタンリー………っ……。
……ライデン、
最後まで。
スタンリーと、
この国の光を支えてくれて……
ありがとう……
イシュタル。
あなたも、
ありがとう。
最後まで……
この命を
守ろうとしてくれたのね……
イシュタル
報告。
生命維持。
不可能。
サラ・ブライト
…いいえ。
あなたは、
最後まで
最善を尽くしてくれたわ。
ありがとう。
…………。
私は結局、
誰かの命の犠牲の上を、
歩いているのね……。
ライデン
……サラ、
それは違う。
陛下は……
民を愛する正義を、
最後まで貫いた。
あの方は、
誰かの犠牲になったなどと、
思う人じゃない。
最後まで、この国を愛し、
民を愛し
子ども達の笑顔を守り抜いた。
それが
スタンリー陛下という人だった。
サラ・ブライト
……もちろん。
スタンリーは、
光そのものだった。
その温かさで、
人も、魔族も、
種族さえ越えて
この国に生きる全ての命を
照らし続けた。
だからこそ……
彼には、もっと
生きていて欲しかった……。
ライデン
……もう。
それ以上
自分を傷付ける言葉を。
陛下の前で、
言わないでくれ……。
サラ・ブライト
ねぇ……
スタンリー?
私を……
救ってくれて……
ありがとう。
第三章 第二幕 【悲しみの矛先】
イシュタル
報告。
周辺生命反応。
急増。
感情数値。
悲嘆。
混乱。
怒り。
全数値。
上昇を確認。
サラ・ブライト
イシュタル。
報告、
ありがとう。
……大丈夫よ。
私が出るわ。
ライデン
ダメだ……!
これだけの悲しみや怒り……
その全てがお前へ向けられたら、
無事で済むわけがない……!
サラ・ブライト
ええ……
分かっているわ?
だからこそ……
私が受け止めなければ
ならないの。
ライデン
違う!!
お前が背負う必要なんてない!!
サラ・ブライト
ライデン。
この国の人達は……
スタンリーを
心から愛していた。
その光を失った悲しみは……
簡単に行き場を
見つけられるものじゃない。
だから……
私は逃げたくないの。
ライデン
…………っ。
ブーチン
やめろ……!
やめてください!!
彼女は……
何も悪くない!!
その怒りを向けるなら……
私です!!
サラ・ブライト
やめて……
ブーチン!
ブーチン
いや、やめない!
サラ……
キミが背負う責任じゃない。
あの日、
キミという命を
天秤にかけたのは……
私だ!
私は教師の立場でありながら……
一人の命を犠牲にして、
多くを救おうと考えてしまった……!
その愚かで未熟な選択が……
今日まで続く悲劇を生んだんだ……
責めるなら、
私を責めるべきなんだ!
ライデン
お前もだ、
ブーチン……!
お前が……
あの日、
サラを天秤にかけた、
その答えが……
これなのか?
お前は、
この結末を望んでいたのか!?
ブーチン
あぁ、
お前の言う通りだ。
私は……
許されない。
だから……
ライデン。
お前の手で……
私を殺してくれ!
それで、
この怒りが少しでも収まるのなら……
私は構わない!
ライデン
ふざけるなぁぁぁ!!
そんな事が出来るわけないだろ!!
お前まで死んで!!
それで陛下が喜ぶのか!!
そんな未来を!!
陛下が望んだと思っているのか!!
イシュタル
報告。
マスター。
左肩。
貫通。
出血量。
増加。
生命反応。
悪化。
サラ・ブライト
…うっ……
っ……
大丈夫よ……
これが、
私という存在の罪ならば……
それを私自身が、
受け止めなければ……
いけない……
誰も悪くない……
みんな……
それぞれに、
守りたいものがあった……
ただ、
それだけなの……
だから……
もう、自分を責めないで……
ライデン……ブーチン……。
イシュタル
マスター。
生命反応。
不安定。
生命維持。
最優先。
モード切り替えます。
イシュタル
第三章 第三幕 【受け継がれる想い】
報告。
マスター。
生命反応低下。
救命プロトコル。
レベル3へ移行します。
No.327。
止血を開始してください。
No.118。
薬剤E-17。
投薬を開始。
血圧低下を確認。
投与量を5%増加します。
No.223。
脈拍を継続監視。
ライデン
……あぁ……
そこまで……
お前達は……
イシュタル
No.041。
体温低下を確認。
保温処置を開始してください。
No.053。
アールグレイティー。
給仕を中止してください。
サラ・ブライト
ふふっ……
あなた達……
ありがとう……
せっかく……
用意してくれたのに……
イシュタル
No.081。
キャパオーバー。
充電を推奨します。
No.081。
命令を再送信。
充電を推奨します。
……
命令未実行。
No.201。
薬剤を補充してください。
No.327。
止血を継続。
No.118。
投薬を継続中。
ブーチン
私は……
教師として生きてきた。
命の尊さを伝え、
人としての在り方を教え……
それが私の役目だと、
信じていた。
でも……
ブーチン
……あぁ。
そうか……
そうだね……
イシュタル
No.223。
脈拍。
低下。
No.118。
投薬を継続。
No.081。
キャパオーバー。
充電を推奨します。
……
命令未実行。
ブーチン
この子達に
教わるべきは……
私だ……。
命とは……
誰かを想い、
その姿から
受け継いでいくものだったのに。
答えばかりで、
中身がないものを
教えていたんだ……。
愛とは……?
そう……
想い。
そして、
行動へ変化させる事が、
守るということなんだ……。
私は……
一番大切なことを
見落としていたんだ……
イシュタル
No.118。
投薬を継続してください。
No.327。
止血を継続中。
マスター。
生命反応が
急速に低下しています。
バイタル数値。
危険領域。
処置パターンを
再解析します……
適合。
確認出来ません。
投薬データを
再解析……
適合。
確認出来ません。
医療データベース。
全症例を検索します……
適合。
確認出来ません。
ライデン(モノローグ)
陛下……。
貴方は人を信じ、
サラも人を信じた。
それでも人は、
その想いを踏みにじる。
なのに……
なぜ誰一人、
その者を責めない?
なぜ……
許せるんですか?!
スタンリー(モノローグ)
【回想】
どうだ、
ライデン!
いい眺めだろう?!
今日も民が
幸せそうな顔をしている!
私は、
この景色が
一番好きなんだ。
民が笑い、
夢を語り、
生き生きと暮らしている。
その姿を見るたびに、
この国を守って
良かったと思える!
スタンリー(モノローグ)
国王という肩書を
全て捨てた時、
最後に残るのは、
一人の人間だろう?
ならば私は、
皆に誠実でありたいんだ!
ライデン
陛下は、
人種を越え、
民を愛し、
その身を捧げている。
どうしてそこまで、
献身的な愛を
与えられるのですか。
スタンリー
はははっ!
難しいことを聞くな!
だが、
強いて言うなら、
私もまた、
民として
愛してもらったと
誇れる時間を
生きてきたからだろうな!
スタンリー
さぁ、
今日も
やらねばならないことは
山積みだ!
私の背中は、
お前に託すと決めた。
頼んだぞ、
ライデン!
ライデン
……はい!
ライデン(M)
俺は……
どうしたいんだろうか……。
イシュタル
No.118。
投薬を継続してください。
No.327。
止血を継続中。
マスター。
生命反応が
急速に低下しています。
バイタル数値。
危険領域。
処置パターンを
再解析します。
……
適合、
確認出来ません。
投薬データを
再解析。
……
適合、
確認出来ません。
医療データベース。
全症例を検索します。
……
適合、
確認出来ません。
生命維持を最優先。
処置パターンを
再構築します。
……
適合、
確認出来ません。
バイタル数値を再測定。
止血処置を再評価。
投薬量を
再演算します。
……
改善が見られません。
解析を継続します。
解析を継続します。
他の処置方法を
検索します。
……
適合、
確認出来ません。
マスター。
応答してください。
マスター。
別の処置方法を
検索します。
……
適合、
確認出来ません。
マスター……
生命維持を
継続します。
マスターサラ……
指示を……
お願いします……
第四章 第一幕 【未来へ】
ライデン
サラ……
ダメだ……
まだ目を閉じるな……!
頼む……
俺を置いていかないでくれ……!
サラ・ブライト
ふふっ……
ライデン……?
どうか……
人を……
憎まないで……ね?
ライデン
そんなこと……
いや、
今はそんな事、
どうでもいい!
俺は……
お前に
生きていてほしい……
それだけなんだ!
サラ・ブライト
過ちは……ね?
命あるものが……
皆、
抱えるもの……
だから……
過ちだけで……
その人を……
終わらせないで
あげて……欲しいの……
人は……
許された時……
初めて……
誰かを守れるように
なるのだから……
ライデン
サラ……
頼む……
もう喋るな……
頼む……から、
生きてくれ……!!
サラ・ブライト
ふふっ……
ありがとう……
ライデン……
あなたに会えて……
本当に良かった……
たくさんの命と出会い……
たくさんの想いに触れられて……
後悔なんて……
何もないわ……?
この子達も……最後まで……
本当によく、頑張ってくれた……
ありがとう……
イシュタル……
愛して……いるわ……?
だからこそ……
あなたに……
私の名前を託します……
「サラ」
どうか……
この世界を……
この星に宿る命を……
守って……あげてね……
今まで……
ありがとう……
イシュタル
――
―――――
……
マスターサラ……
バイタル消失……
生命反応……
確認出来ません……
……
マスターサラの
バイタル消失……
死亡……
を確認……
シマシタ……
第四章 第二幕 【受け継ぐ者】
イシュタル
【執務室にて】
ライデン様。
継承書類。
確認をお願いします。
ライデン
全く……
お前も、
なかなかに
人使いが荒いよな……?
イシュタル
ライデン様。
手が止まっています。
任務遂行を
最優先してください。
現在の処理速度では、
提出予定時刻に
遅延が発生します。
ライデン
はぁ……
やれやれ……
やるよ、
やればいいんだろ?
イシュタル
処理速度を測定。
現在の所要時間。
推定二時間三十分。
ライデン様。
提出予定時刻に
間に合いません。
ライデン
くぁぁぁぁ!!
分かった!
分かったよ!
倍速でやるから……
もう少し
静かにしてくれ!
イシュタル
了解致しました。
ライデン
……
サラに
そっくりだな。
お前、
今怒ったのか?
イシュタル
怒りの感情。
持ち合わせておりません。
ですが。
任務遂行は
絶対的です。
ライデン
……はいはい。
全く……
最後まで
容赦ないな。
……
うぅ……
なんだよ……
この形式は……
……
……
…………。
くっそ……
継承って……
厄介な作業ばかりだな……
ライデン
よし!!
終わったぞ!!
確認頼む!!!
イシュタル
ライデン様。
全継承書類。
確認完了。
王位継承手続き。
正常に終了しました。
提出予定時刻まで。
残り四分十二秒。
任務。
予定通り完了です。
ライデン
終わったぁぁぁ……
やっと
息がつける……!
イシュタル
ライデン様。
処理速度。
予定値を
上回りました。
任務達成率。
一〇〇パーセント。
お疲れ様でした。
ライデン
ははっ。
そういうところだよなぁ……。
イシュタル
ライデン様。
何か問題でも
ありましたか?
ライデン
いや、
問題なんて
何もない。
ちゃんと……
受け継いでるんだなって、
思っただけさ。
俺も
向き合わないと、
だな……
ライデン
じゃ……
サラ、
行こうか!
イシュタル
了解致しました。
第四章 第三幕 【対峙】
ブーチン
待ってた……
来てくれて、
ありがとう。
ライデン
……お前に……
聞きたいことがある。
ブーチン
うん……
ちゃんと答えるよ。
ライデン
お前は……
今でも
後悔しているか?
ブーチン
……あぁ。
きっと……
消え去ることはない痛み、
として。
ここに刺さってる。
ライデン
その上の覚悟で……
ここに立ってるのか?
ブーチン
……今の私が
何を連ねようと。
君の信頼が
回復するとは思っていない。
ただ、
一発……
私を殴ってくれないか?
ライデン
……ふっ。
一発、
だけなっ!
ブーチン
ぐはっ……!
ライデン
気が済んだか?
ブーチン
ははは……
……相変わらずの威力だね……。
ライデン
あの時よりは……
手加減した。
ブーチン
そうだね……
うん、
ありがとう……
ライデン。
ライデン
……あぁ。
さぁ、
俺は行く。
ブーチン
ライデン……!
君は……
この後、
どう生きるつもりなんだ?!
ライデン
さぁな……。
それを俺は見つけにいく!
そして
みんなが遺したものを……
俺が紡いでいく!
ブーチン
私は……
あの日を
そして今日を忘れない。
私の中にある後悔を……
弱さを……
認めた上で……
ここの子供達を……
大切に育てていくつもりだよ。
ライデン
あぁ、
それがお前だよ。
……じゃ、
またな!
ブーチン
あぁ……
またね、
ライデン。
ブーチン(M)
私は……
弱いからこそ……
否定ではなく……
受容を選ぶ。
だから……
ライデン……
君もどうか……
本当に自分を
許せる日が来ることを……
願っている!
第四章 第四幕 【蒼のその先へ】
イシュタル
第一地区。
進化型ガジュル、
一体出現中。
全班に
支援要請を致します。
ライデン
うぉらぁぁぁぁぁぁぁ!!
よし!!
左サイドから
援護を頼む!!
イシュタル
全班に
援護を要請致します。
スタンリー(回想)
ライデン!
お前は、
お前らしく生きろ!
それが一番
似合うからな!
イシュタル
ライデン様。
応援到着まで
後五分。
しばらく――――
ライデン
サラ!
ここで
のんびり待ってる
時間はない!!
救われる命が
最優先だ!!
うぉらぁぁぁぁ!!
イシュタル
了解致しました。
ライデン様の
バイタル数値上昇。
サポートに徹します。
スタンリー(回想)
なぁ、
ライデン。
お前は今……
心から笑えているか?
ライデン
―――俺も、
生きることの怖さに
震えた夜もある!
それでも俺は―――!!
お前達の
笑う顔を守りたいんだぁぁぁぁ!!
押し付けだろうと
何だろうと、
知ったこっちゃねぇ!!
上等だぁぁ、
ガジュル!!
―――俺は
てめぇらをぶっ倒す!!
俺が守りたいものを
守る為になぁぁぁ!!
イシュタル
ライデン様の数値が
兆候を超えました。
第二覚醒。
識別認識、
完了。
―――データを
上乗せ致します。
スタンリー(回想)
でもな。
私は信じているんだ。
お前は、
この国の在り方を。
心との向き合い方を。
大切に出来る者だと。
ライデン
魔大剣・第二形態!
力を解き放つ!!
――――とどめだぁぁぁ!!
デスティニー・
セカンド・
オブ・
サテライトォォォ!!!
スタンリー(回想)
だからまた。
いつか会おう、
ライデン!
イシュタル(M)
―――未来ハ何ヲ、標スノカ。
―――私ハドコニ、還ルノカ。
―――導キ出ス、ソノ日マデ。
あなたの中で
「感じた」蒼さを、
忘れる事は
ないでしょう……。
イシュタル
任務遂行、
お疲れさまでした。
ライデン様。
――――空が。
今日も
「蒼」です。
<END>
🐾
猫One〜 応援チケット
最後まで『Story of the Leiden』をお読みいただき、
本当にありがとうございます。
この物語や歌、声劇、創作活動を
応援したいと思っていただけましたら、
応援チケットをご利用いただけると嬉しいです。
あなたの応援が、次の作品を生み出す力になります。
いつも本当にありがとうございます。
メンバーメッセージ
NKO-IDで本人認証されたメンバーだけが、登録ニックネームで書き込めます。
みんなのメッセージ
まだメッセージはありません。
メッセージを書くには本人認証が必要です
公開画面にNKO-ID・確認コード・メールアドレスは表示されません。
